先日借りた本の中から、村井理子さんの『兄の終い』を紹介します↓
兄の終い 村井理子著
何年も絶縁状態だった兄が遠方で急死し、その後始末に奔走した記録です。
夜中に突然かかってきた警察からの電話が全ての始まり。
村井さんと離婚した元妻(加奈子ちゃん)が協力し、遺体の引取り・火葬、アパートの引き払い、児童相談所に保護された兄の息子の引き渡しまでを、3日＋2日でやり遂げます。
女性二人が怒涛の勢いで作業をこなしていく様子は、ある意味爽やかささえ感じます。
テンポよく軽快な文章のお陰で、生活に困窮したあげく急死した兄や、兄の遺体を発見したのが小学生の息子だったという悲惨な事実が、とても軽く感じられてしまうのは良かったのか…(*_*)
この本を読む限りでは、亡くなった兄に対してチャーミングなダメ男という印象を持ってしまうけれど、身内にしつこく金銭を要求していたことなどを見ると、やっぱり相当厄介者だったんだろうなと思わざるを得ません。
生きている時は憎くても、死んだら『いいひと』になってしまうのは、よくある事だけど、やっぱり巻き込まれた側の人間としては、簡単に割り切れない気持ちがあって当然だと思うんですよ。
悪人ではないけれど、最底辺まで転落してしまった兄の人生について、もう少し掘り下げてみても良かったんじゃないかな…
この本では軽く触れられている程度ですが、村井さん自身幼少期の心臓病で入退院を繰り返していたせいで、兄は親族に預けられて育ってるんですよね。
そのことを負い目に感じた母が、問題を起こす兄を過保護にしていたようで、結局それが裏目に出た結果なのではないかなぁと思ってしまいます。
(ただ村井さん自身、兄の問題の根本は自分が原因だと思いたくないようで、この辺りは非常にサラッとしか触れていません)
この核心に触れないせいで、人の死を扱っているのに軽い本になってしまったのかな…と思ってしまいました。
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