久しぶりにヒリヒリした読書体験でした。
彼女は頭が悪いから 姫野カオルコ著
2016年に東大生5人が起こした強制わいせつ事件がモチーフのフィクション作品です。
のちに被害者となる女子学生 美咲は、下町の裕福ではないが家族仲が良い家庭で育ち、スレていない純真な女性として描かれています。
一方、主犯となるつばさは、上流階級&高学歴が鼻につくような、ある種の欠落した感性の持ち主(ゲス野郎)として描かれ、女性を搾取の対象として扱います。
唯一つばさと釣り合う女性として登場するのが、東京女子大の学生の摩耶(上流階級で美人の帰国子女)ですが、彼女とは交際に発展し逮捕と同時に破局します。
事件までのヒリヒリするような文章と、繰り返し描かれる東大ブランドの恩恵を享受する犯人たちの高慢さと低俗さに、読みながら怒りがこみ上げてきます。
事件後、ネット上で袋叩きにされたのは、加害者ではなく被害者の美咲だった事実は、どうにもやり切れません。
とくに性犯罪において、第3者が被害者女性を叩くのは、絶対してはいけない事だと思います。だって加害者が絶対的に悪いのですから。
さらに犯人の東大生5人は事件後も、大したダメージを受けず大学や名前を変えて、のうのうと勝ち組として振舞っているという事実にもうちのめされます。
ただ最後、傷つけられた美咲に寄りそう三浦教授の言葉に、かすかな希望を見い出すことができるのが救いでした。
恥ずかしながらこの事件は、ほとんど記憶にありませんでした。
他に大学サークルのレイプ事件がいくつもあったからかもしれません。
作者の姫野さんが事件に怒り、書き上げた作品だと知りました。
本のタイトルである「彼女は頭が悪いから」は、取り調べで犯人の東大生が実際に口にした言葉なのだそうです。
どれくらい事実に近いのかは分かりませんが、少なくとも東大が無視できなかったくらいリアルに肉薄しているのではないか?と思います。(実際に東大が姫野さんをシンポジウムの場で吊るしあげたらしいので)